先ほどツイッターでこんなツイートを見かけました。
やっぱり、建築業界の第一線に3年前までいた僕はこういうツイートが気になってしまいますね。
こういう機会です。もう語る事はないと思っていましたが、これから家を建てる人に役に立ちそうな建築豆知識をつらつらと書いていきましょう。
現役の時と違って会社のしがらみがありませんから、自由に何の打算もなく書いていけそうです。
正直、今のほうがいい事言えそうだ。笑
実は鉄骨のほうが地震に弱い!?隠された地震の真実。
地震が怖い点は「衝撃エネルギー」ではなく「運動エネルギー」によって家がダメージを食らう点です。
いや・・・まあ衝撃も運動エネルギーなんでちと字面ではわかりにくいかもしれませんが、そのせいか意外と多くの人がこれを見落としています。
なんか 「地震に強い家 = 鉄骨の家」 と思っている人が多いんだけど、地震は軽かろうが重かろうが全く同じ勢いで建築物を揺さぶってきます。つまり、地震では自分自身の重量が衝撃エネルギーとなり建物に襲い掛かります。よって重い家ほど食らうダメージは圧倒的にでかいんです。
構造強度の話をすれば鉄骨のほうが強いのは確かです。
しかし、それ以上に鉄は重い!軽量鉄骨だとしても木とは比較にならないほど重いわけです。これは多くのハウスメーカーが敢えて説明しない事実です。
ほとんどのハウスメーカーが壁の強度ばかりPRしてますからね^^;
あと、横揺れの地震に対して、なぜか上からの力である耐荷重のPRしているハウスメーカーもあります。
タンクローリーが突っ込んできた時の安全性や、イナバの物置的な重量に対する耐久を示すお話であればは壁強度だけ考えればいいですが、地震の話になるとそんなに単純な話ではないんです。
地震に強い家 と 強度が強い家。
これがイコールであるように感じる消費者イメージを逆手に取ったPRですね。正直、キタナイです。
まず地震対策で一番有効なのは家の重量を軽くすることだと覚えておいてください
屋根瓦のザックリとしたウンチクを語ろうか
先ほどの熊本城のツイートで語られている通り、古来の日本家屋では地震が起こった時に瓦を落とすことで倒壊を避けるという工夫がされていました。
とても重い存在である瓦が建物の上のほうについていると、重心の問題でより大きく家を揺さぶってしまいます。
ですから、一定の揺れで落ちるようにする発想はかなり画期的なんです。
ただ、瓦は高価なので城はともかく一般の家屋に普及するのには時間がかかりました。
しかし、江戸時代に起こった「江戸の大火」の際、舞い落ちる火の粉で次々と火が燃え移り火災が拡大、大惨事となってしまったことを受けて、江戸幕府が一定の厚み以上の瓦屋根の義務化を命令し、町でも瓦ぶき屋根が当たり前のように見られるようになったのです。
この時も瓦止めは主に土で行われ、地震の際は落ちるようになっていました。
そして、時代はさらに進み1923年。関東大震災が起こります。
この時に、落ちてきた瓦でケガをする人が続出し、この時から屋根瓦は金属金具で止められるようになります。
・・・つまり、地震でも瓦が落ちなくなったんです。
そして、1995年。阪神淡路大震災。
多くの家が倒壊したこの震災で、倒壊が多かった理由に重い屋根瓦が原因だと指摘され、瓦に代わる屋根材であるカラーベストがひときわ注目を浴びるようになり、新築される家には一時期あまり瓦屋根を選ばれなくなりました。
その後、現在は屋根瓦の軽量化がかなり進み、普通に瓦屋根も新築で選ばれるようになっています。
最近の家はなんか薄っぺらい屋根の家が多いですよね。
あれは、瓦が軽量化されて薄い平瓦が増えていることが理由の一つです。
(カラーベストも薄い屋根材なので同様の外観になります。)
今、地震に強い家を建てたいならどうするべきか
実はこれ、多くの人が困っているところだと思います。
だって、どの工務店やハウスメーカーも「うちは地震に強いです!」と言い切りますからね。笑
お客さんからしたらどれを信じていいのかわからなくなります。
でも、実はかなり違うのですよ。
耐震等級3の信頼性
最近よく言われているのが「わが社は耐震等級は最高の3です!」と言う謳い文句です。
分かりやすい言い方すると、阪神淡路大震災くらいの地震が来ても倒壊しないレベルが耐震等級3です。
国が設定する等級としてはこれが最高等級となるのですが・・・正直、信頼はできません。
ちなみに「gal」という数値があるのですが、100galあたり1秒間に物を1mずらす加速度のことを差しています。
先ほども書きましたが、地震のエネルギーは運動エネルギーです。
ちなみに、600galで震度6強相当になります。(震度の計測は運動エネルギー以外にも色々計算されているのであくまで目安とはなりますが。)
それを踏まえて耐震等級の話をすると、耐震等級3とは150galで無損傷であり、600galで倒壊しない強度にあたります。
なお、ここでも表現の仕方がなかなかやらしくて、「倒壊しない」とは地震後に家の形を保っていて逃げられるレベルを差しています。すなわち、今回の熊本の地震のように、立て続けに大きな余震が来ることは全く想定していません。
1発目の地震に耐えても2発目の地震には耐えられない。耐震等級3とはそういう強度なんです。
さて、、、、、次に述べる数値はこれはあくまで「最大瞬間加速度」の数値です。
その地震で最も揺さぶられた「最大」の「瞬間的」な数値であり、実際にはほとんどの地域でここまで強い加速を食らっていないという前置きを含めたうえで、少し怖い数字を発表しましょう。
関東大震災最大瞬間加速度 約600gal
阪神淡路大震災最大瞬間加速度 818gal
新潟中越地震最大瞬間加速度 1716gal
東日本大震災最大瞬間加速度 2930gal
いくら最大値の数字だとはいえ、
耐震等級の最高等級である3の基準が少々甘い気がするのは僕だけでしょうか。。
まず見るべきは「倒壊しないのか」「被害が少ないのか」
先ほど、どの家が強いか分かりにくいといいましたが、一つ判別できる点を挙げるなら「倒壊しない家なのか」「被害が少ない家なのか」です。
実際、本当に地震に強い家を作っているハウスメーカーにとっては倒壊しないのはもう当たり前であって、今考えているのは「繰り返し来る地震にもいかに最小限の被害で耐えられるか」を突き詰めている段階です。
一口に「わが社の家は地震に強いですよ!」といっても、目指しているところが全然違うんですよ。
では、その繰り返す地震で最小限の被害で済む家とは、具体的にどんな家なのかという話をすると、ズバリ「地震発生時の建物のゆがみが少ない家」です!
ですから、真剣に地震に強い家を探すときは、地震発生時の建物のゆがみの『数値』に注目してください。
大切な事なので2度言いますよ。気にすべきは「歪みの数値」です
2mmゆがんだとか、20mmゆがんだとか、そういう「数値」です。
今はここもいろいろな手でごまかしているハウスメーカーが多いです。
最近は、免振装置や制振装置を搭載する家も増えてきて、「当社のゆがみは従来の1/2です!」とか誇らしげに謳っている会社が多いですが、元々の構造が100mmゆがんでいたら、1/2にしても50mmゆがんでいることになります。
実数値に目を光らせましょう。
さて、最後に一応言い逃れを書かせてください。笑
僕は既に現役を退いた元専門家です。ですからもしかしたら書いた内容に間違いがあるかもしれません。
それに、耐震等級3の強度に関しても、実はめちゃくちゃ地震に強い家なのに、耐震等級で定める部材を使っていないがために等級が取れないような家があったりして、この辺の話はいろいろな見解があり僕自身も理解しきれていない部分があるのは確かです。
ただ、参考にしてもらえる人に参考にしてもらえたらありがたい。と言うことで、今日の記事は終わりとします。
ここまで読んでいただきありがとうございました^^