
AI×メールで売り込みゼロの『自然体ビジネス』設計士の長嶺圭一郎です。人見知りだった元住宅営業マンが、リストマーケティングでトップセールスになった経験を活かして、お話しします。
「よし、メルマガを始めよう!」と思ったとき、多くの人がまず取り組むのが「ペルソナ設定」ですよね。ターゲットとなる顧客像を細かく設定して、その人に向けたメッセージを発信する。マーケティングの基本として、僕も昔から大切にしてきました。
でも、こんな経験ありませんか?
時間をかけて丁寧にペルソナを作り込んだのに、いざメルマガを送ってみると、思ったような反応が得られない…。開封もされないし、クリックもされない。なんだか、独りよがりなラブレターを送り続けているような、少し気恥ずかしい気持ちになってしまうこと。
実はそれ、あなたの努力が足りないわけでも、文章が悪いわけでもないのかもしれません。もしかしたら、その「ペルソナ設定」というアプローチ自体に、ちょっとした落とし穴があるのかもしれないんです。詳しくはなぜあなたの「万能商品」は売れない?お客が本当に求めている…でも解説していますが、今回は特にメルマガに焦点を当てて深掘りします。
この記事では、そんなお悩みを持つあなたのために、顧客をより深く、本質的に理解するための新しい視点「ジョブ理論」について、僕自身の失敗談や具体的な改善事例も交えながらお話ししていこうと思います。
この記事の要約
- 従来のペルソナ設定の限界と、なぜメルマガが響きにくいのかを解説します。
- 顧客の本当の動機を理解する「ジョブ理論」の基本を、有名な事例を交えて分かりやすく紹介します。
- あなたのメルマガマーケティングにジョブ理論を活かし、顧客に本当に求められるコンテンツを作るための具体的なステップと改善事例を提案します。
【なぜ?】頑張って作ったペルソナが響かない根本原因
【ズレの原因】「理想の顧客像」と「現実の悩み」
そもそも、ペルソナ設定ってどうして難しいんでしょう? 多くの場合、年齢、性別、職業、年収、趣味…といった「属性」を細かく設定していきますよね。 でも、ここにちょっとした罠が潜んでいることがあるんです。
属性情報だけで人物像を固めてしまうと、いつの間にか僕たちの「こうあってほしい」という理想の顧客像を作り上げてしまいがちです。 でも、現実のお客様が抱える悩みや欲求は、もっと複雑で、状況によって刻一刻と変化するものじゃないでしょうか?
例えば、「30代、女性、都内在住、会社員」というペルソナ。一見すると具体的ですが、彼女が「なぜ」今、あなたの情報を必要としているのか、その根本的な動機までは見えてきませんよね。
書籍『嫌われないメルマガのすべて』でも語られていますが、顧客を本当に理解するというのは、属性のラベルを眺めるだけでは不十分なんです。 そのラベルの奥にある感情や、その背景にある立場、目的、悩みにまで想像力を働かせる必要があるんですよね。どうでしょう? つい、分かりやすい属性だけでお客様を分かった気になってしまっていませんか?
【僕の失敗談】僕もハマった「完璧なペルソナ」の罠
少し恥ずかしい話ですが、僕自身もこの罠にどっぷりハマった経験があります。独立当初、人見知りの元営業マンだった僕は、とにかくお客様と話すのが苦手で…。 だからこそ、「完璧なペルソナ」さえ作れば、対面しなくてもお客様の心に響くはずだ!と意気込んでいました。
その名も「鈴木さん(仮)」。年齢は42歳、家族構成は…なんて具合に、まるで実在する人物かのように細かく設定を作り込んで、悦に入っていたんです。でも、いざ「鈴木さん」に向けてメルマガを書いても、反応はさっぱり。
当たり前ですよね。僕が向き合うべきだったのは、僕の頭の中にいる完璧な「鈴木さん」ではなく、目の前にいる生身の、それぞれ違う悩みや状況を抱えたお客様だったんですから。電柱の陰に3時間隠れていた頃と、本質的には何も変わっていなかったのかもしれません(笑)。 この手痛い失敗から、僕は「人は属性だけでは動かない」と痛感し、属性に代わる新しい顧客理解の軸を探し始めました。
✔︎ ここがポイント
- ペルソナ設定は、顧客の「属性」に注目するアプローチ。
- 属性だけでは、顧客が行動する「なぜ?」という動機が見えにくい。
- 作り手の「理想像」が先行し、現実の顧客とのズレが生じやすい。
【新常識】顧客の「ジョブ(片付けたい用事)」を見つけよう
では、属性で顧客を捉えるペルソナ設定の代わりに、どうすればもっと深く顧客を理解できるのでしょうか? そこで出会ったのが、ハーバード・ビジネス・スクールの故クレイトン・クリステンセン教授が提唱した「ジョブ理論(Jobs to be Done)」です。
【ジョブ理論とは?】ミルクシェイクが教えてくれた本質
ジョブ理論を説明するときに、必ずと言っていいほど登場するのが「ミルクシェイク」の有名な事例です。この理論の原典は、クリステンセン教授らがハーバード・ビジネス・レビューに寄稿した論文で詳しく解説されています。(出典: Know Your Customers’ “Jobs to Be Done” - Harvard Business Review)
あるファストフード店がミルクシェイクの売上を伸ばそうと、味を変えたり、トッピングを増やしたり、色々な試みをしました。でも、売上は一向に伸びません。
そこで、調査チームは一日中店舗に張り付いて、顧客が「どんな状況で」「何のために」ミルクシェイクを買っているのかを観察しました。すると、意外な事実が判明したのです。
顧客の多くは、朝、車で一人で来店し、ミルクシェイクだけを買って去っていきました。彼らがミルクシェイクを「雇用」して片付けたかった「ジョブ(用事)」とは、**「退屈で長い通勤時間を、片手で扱えて、お腹も満たせる面白いもので紛らわせたい」**というものだったのです。
このジョブを片付ける上で、ミルクシェイクは競合であるバナナやドーナツよりも優れていました。手が汚れず、ストローで飲むのに時間がかかり、腹持ちも良いからです。どうでしょう?面白い視点だと思いませんか?顧客は「モノ」が欲しいのではなく、自分の「用事」を片付けるために、商品やサービスを「雇用」している、というのがジョブ理論の根幹なんです。
【視点の違い】「属性」で見るペルソナ、「状況」で見るジョブ
ここでペルソナとジョブの違いを整理してみましょう。
- ペルソナ:顧客の「属性(Who)」に焦点を当てる。「どんな人が買うのか?」
- ジョブ:顧客の「状況と目的(Why)」に焦点を当てる。「なぜ、その状況で、それを買うのか?」
ペルソナが顧客を静的なプロフィールで捉えるのに対し、ジョブ理論は顧客が置かれた「特定の状況」と、そこで達成したい「進歩」や解決したい「課題」に注目します。 この視点を持つことで、「なぜ顧客は行動するのか?」という、より本質的な顧客インサイトに迫ることができるんです。
✔︎ ここがポイント
- ジョブ理論は、顧客が商品やサービスを「雇用」して片付けたい「用事」に注目する考え方。
- 顧客の「属性(Who)」ではなく、「状況と目的(Why)」を理解することが重要。
- ミルクシェイクの事例は、顧客の隠れた動機を発見するヒントになる。
【実践編】あなたのメルマガで顧客の「ジョブ」を片付ける3ステップ
このジョブ理論、どうやって僕たちのメールマーケティング戦略に活かせばいいのでしょうか? ここからは、具体的な3つのステップで考えていきましょう。
ステップ1:顧客があなたの商品を「雇用」する状況を考える
まずは、あなたの顧客が、どんな「ジョブ」を片付けるために、あなたの商品やサービスを「雇用」しているのかを考えてみましょう。 難しく考える必要はありません。いつものお客様との会話を思い出してみてください。
- お客様は、どんな時に「あ、そうだ、〇〇(あなたの商品・サービス)を使おう!」と思い立ちますか?
- その時、お客様はどんなことに困っていたり、何を目指していたりするでしょうか?
- あなたの商品以外に、どんな選択肢(競合商品だけでなく、全く違う解決策も含む)がありましたか?
例えば、僕のクライアント様の場合、「もっと売上を上げたい」という大きなジョブだけでなく、「毎日のSNS発信に疲れた」「売り込みをせずに、自分の専門性に集中したい」 といった、もっと具体的で感情的なジョブを抱えていることが多いんです。いかがでしょう? あなたのお客様の顔を思い浮かべながら、少し考えてみてください。
ステップ2:片付けたい「ジョブ」から逆算してコンテンツを作る
顧客の「ジョブ」が見えてくると、メルマガでどんな情報を届けたら喜ばれるかが、自然と明らかになってきます。これはまさに『リストマーケティング初心者のための教科書』で語られている、価値ある記事の条件にも繋がります。
- 機能的なジョブ:「〇〇を効率的に終わらせたい」
- →具体的なノウハウ、ツールの使い方、成功事例などを紹介する。(ノウハウ記事)
- 感情的なジョブ:「失敗したくない」「安心したい」「仲間が欲しい」
- →あなたの失敗談、お客様の声、コミュニティの様子、あなたの価値観や人柄が伝わるストーリーなどを伝える。(パーソナル記事)
例えば、「専門家としてもっと信頼されたい」というジョブを抱える顧客がいるとします。その人に向けて、ただ専門的なノウハウ記事を送るだけでは不十分かもしれません。もしかしたら、その専門家がどんな想いで仕事をしているのか、どんな失敗を乗り越えてきたのか、といった「人となり」に触れることで、「この人なら信頼できる」という感情的なジョブを片付ける手助けができるかもしれないのです。このあたりはメルマガのコンセプト作りにも関わってくる重要なポイントですね。
ステップ3:小さな「ジョブ」に寄り添いファンになってもらう
そして、ここがとても大切なポイントなのですが、大きなジョブだけでなく、顧客が抱える小さな、でも切実な「ジョブ」に寄り添うことを意識してみてください。
「ちょっとした疑問をすぐに解決したい」 「背中を押してほしい」 「自分のやっていることが正しいか不安」
こうした心の機微に応えるようなコンテンツは、顧客に「この人は私のことを分かってくれている」という深い信頼感を与えます。 これこそが、売り込みゼロでも「あなたから買いたい」と言われる関係性を築くための、いわば「心の筋トレ」なんだと思うんですよね。こうして関係性が深まれば、自然とメルマガの開封率を上げることにも繋がります。
✔︎ ここがポイント
- 顧客が商品を「雇用」する具体的な状況を洗い出す。
- 顧客の「ジョブ」を機能的・感情的に分類し、それぞれに応えるコンテンツを企画する。
- 大きなジョブだけでなく、日々の小さなジョブに寄り添うことが信頼関係を深める。
【事例】ジョブ理論でメルマガはこう変わる!ビフォー・アフター
理論だけではイメージが湧きにくいかもしれませんので、僕のクライアント様(オンライン料理教室を運営)の改善事例を、ご本人の許可を得て、インタビュー形式でご紹介します。
長嶺: Aさん、今日はありがとうございます。以前、メルマガの反応が薄いと悩んでいらっしゃいましたよね。
Aさん(クライアント): はい…。ペルソナは「30代の働く主婦、料理初心者」と設定して、時短レシピを中心に送っていたんですが、全然…。
長嶺: その後、ジョブ理論の考え方を取り入れて、どんな変化がありましたか?
Aさん: 受講生に改めて話を聞いてみたんです。そしたら、皆さんが本当に片付けたかったジョブは「時短」だけじゃなくて、**「毎日の献立を考える苦痛から解放されたい」「家族に『またこれ?』と言われたくない」「料理で自己肯定感を高めたい」**といった、もっと感情的なものだと気づきました。
長嶺: なるほど!それでメルマガの内容をどう変えたんですか?
Aさん: レシピ紹介だけでなく、「1週間の献立が楽になる買い物リスト」や「余った食材のアレンジ術」、さらには私の料理の失敗談なんかも送るようにしました。すると、「まさにこれが欲しかった!」「A先生も失敗するんですね!」と返信が来るようになって、教室への申し込みも増えたんです!
Aさんの事例は、ペルソナの「属性」だけを見ていた状態から、顧客の「ジョブ」に目を向けたことで、提供する価値が劇的に変わった好例です。
✔︎ ここがポイント
- Before: 「時短したい料理初心者」というペルソナに基づき、機能的なレシピ情報だけを提供。
- After: 「献立を考える苦痛から解放されたい」というジョブに基づき、感情的な悩みに寄り添うコンテンツ(献立リスト、失敗談など)を追加。
- 結果: 読者からの共感と信頼を得て、エンゲージメントと売上が向上した。
【テンプレート】明日から使える!顧客のジョブ発掘インタビュー
「でも、どうやって顧客のジョブを見つければいいの?」という声が聞こえてきそうですね。一番良いのは、やはり直接お客様に聞くことです。以下に、僕が実際に使っているインタビューの質問項目をテンプレートとしてご紹介します。
ジョブ発掘インタビューフォーマット
- 購入のきっかけについて
- 「今回、〇〇(商品名)を購入しようと最初に思ったのは、どんな時でしたか?」
- 「その時、他にどんな選択肢を検討しましたか?(商品だけでなく、何もしない、という選択肢も含めて)」
- 解決したかった課題について
- 「〇〇がなかった時、どんなことで一番困っていましたか?」
- 「〇〇を使うことで、どんな状態になることを期待していましたか?」
- 購入の決め手と不安について
- 「最終的に〇〇を選んだ決め手は何でしたか?」
- 「購入する前に、何か不安だったり、ためらったりしたことはありましたか?」
これらの質問を数人のお客様に投げかけるだけで、きっと驚くほど多くの顧客インサイトが見つかるはずです。
✔︎ ここがポイント
- 顧客のジョブを見つける最良の方法は、直接インタビューすること。
- テンプレートを活用し、「購入のきっかけ」「課題」「決め手と不安」を深掘りする。
- 数人の顧客に聞くだけでも、メルマガコンテンツの貴重なヒントが得られる。
よくある質問(FAQ)
Q1: ジョブ理論とペルソナは併用できますか?
A1: はい、併用することを強くお勧めします。ペルソナで「誰に」を大まかに描き、ジョブ理論で「なぜ、その人が行動するのか」を深く掘り下げることで、より精度の高いマーケティングが可能になります。
Q2: 顧客の「ジョブ」が複数ある場合はどうすれば?
A2: 複数のジョブが見つかった場合は、それらをセグメントの軸として活用できます。例えば、「効率化」を求める層と「安心感」を求める層でステップメールの内容を分けるなど、よりパーソナライズされたアプローチが可能です。
Q3: BtoBビジネスでもジョブ理論は使えますか?
A3: もちろんです。BtoBの購買決定は、個人の感情だけでなく「組織としてのジョブ(コスト削減、リスク回避、社内評価の向上など)」が複雑に絡み合います。ジョブ理論は、こうした複雑な意思決定プロセスを解き明かすのに非常に有効です。
Q4: ジョブを見つけるのが難しいです。ヒントはありますか?
A4: お客様が使っている「動詞」に注目してみてください。「〇〇を管理したい」「〇〇を報告しなければならない」「〇〇で繋がりたい」など、彼らが片付けたい用事が言葉の端々に表れているはずです。
Q5: メルマガ以外にも応用できますか?
A5: はい。ジョブ理論は商品開発、Webサイトのコンテンツ設計、セールストークなど、マーケティングのあらゆる側面に活用できる普遍的な考え方です。
まとめ:メルマガは、顧客の『ジョブ』を解決する最高のパートナー
ここまで、ペルソナ設定の限界と、それに代わる「ジョブ理論」という視点についてお話してきました。
もちろん、ペルソナ設定が全く役に立たない、と言いたいわけではありません。誰に届けたいのかを考えることは、依然として重要です。大切なのは、ペルソナという「属性」の視点に、ジョブ理論という「状況と目的」の視点を掛け合わせることで、顧客という人間を、より立体的に、より深く理解しようと試みることです。
顧客が片付けたい「ジョブ」は何か? そのために、自分たちのメルマガはどんな手助けができるか?
この問いを常に心に留めておくだけで、あなたの日々の情報発信は、単なるお知らせから、顧客の悩みに寄り添い、未来を照らす温かいパートナーのような存在に変わっていくはずです。そして、その深い関係性こそが、プラットフォームの動向に左右されない、あなたのビジネスを長期的に支える本物の「資産」となるのです。
無料セミナーでリストマーケティングを学ぼう!!
