AI×リストで自然体ビジネス設計士の長嶺圭一郎です。

今回は「お客さんには完成品より途中経過を見せなさい」という話をお届けします。これはプロモーション、商談、セールスのあらゆる場面で、成約率を大きく左右する基本的なテクニックです。

完成形だけを見せる代償

まず大前提として、押さえておいてほしいことがあります。

お客さんはすごく素人です。

これは悪口ではなく、当たり前の事実なんです。でも専門家である僕たちは、この当たり前を忘れがちです。自分たちが何年も試行錯誤して身につけたことを、お客さんはほぼ何も知りません。むしろ、お客さんが知らないのが正常です。

セールスのご相談をお受けしていると、9割方このポイントにたどり着きます。ターゲット、ペルソナという言葉は知っているのに、実際には理屈だけで、本当の解像度が上がっていないケースがほとんどです。

そんな状態で完成品だけを見せるとどうなるか。

たとえば、たった20文字のキャッチコピーを提案するとしましょう。僕の企業理念である「綺麗ごとだけで食べていける人を増やす」—これは20文字です。これをお客さんに提案して「これで30万円です」と言ったら、どんなリアクションが返ってくるか、想像できますよね。

なぜシンプルな提案ほど価値が伝わらないのか

実は、いいキャッチコピーほど「簡単に見える」んです。

キャッチコピーは、お客さんにとって当然の言葉で、かつ端的に伝えなければなりません。そのプロセスを経ているから、お客さんから見ると「これ私たちでも考えられたんじゃないか」と見えてしまう。それが実は、いいキャッチコピーの証拠なんですが、お客さんはそんなことを知りません。

結果、この20文字に30万円の価値を感じてもらえない。納得できない。そこへ陥るわけです。

キャッチコピーの価値の見え方については、こちらの記事でも掘り下げています。

大垣市商店街よオイラは悲しいぞ!!優れたキャッチコピーをただの詐欺コピーにしないために気を付けたいこと。

どうも、セールスコピーライターの長嶺です。 先日、地元の商店街で買い物していたらこんなポスターを見つけました。 長嶺 なぬぃ!?大垣市が珈琲発祥の街!?え!うそ!めっ…

では、どうすればいいのか。

結論から言うと、その20文字に至るまでの試行錯誤をすべてお客さんに見せることです。

もし僕がキャッチコピーを提案するなら、その20文字を生み出すまでに考えてきたキャッチコピー案をすべてお客さんに見せます。ボツにした案はなぜボツにしたのか。何を考えていたのか。その過程を語る。それだけで、その20文字の重みが全く違って見えるようになります。

住宅営業時代に学んだこと

昔、僕が住宅営業マンだった時代、この原理を痛感する経験をしました。

完成した間取り図を1枚、ペラッとお客さんに渡すだけでは、その図面は安い図面に見えます。20畳のLDKって書いてあっても、実際にどの程度広いのか、光がどう入るのか、どれだけ快適に過ごせるのか—何も伝わりません。多くのお客さんは「こんな簡単な図面に、こんなにお金をかけるんですか」という感覚になります。

数千万円の決断を迫る商品なのに、その図面だけでは価値が伝わらない。

だから僕は、意識的に図面の完成過程を残しました。手書きで、消しゴムは使わない。「ここじゃうまくいかないな」と思ったら、別の紙に次の図面を描く。その紙の束をそのままお客さんの商談に持っていきました。

めんどくさい。効率が悪い。でも、これが絶対に必要だったんです。

なぜなら、その紙の束を見ると、お客さんは初めて「あ、この人がこんなに考えてくれたんだ」と実感するからです。シンプルに見えた図面が、実は綿密な試行錯誤の上に成り立っていることが、一目で伝わる。結果、数千万円の決断がその場で通る。そういうことが何度も起きました。

完成形を見せた後に起きる悪循環

もう1つ、大事なポイントがあります。

完成形だけを見せると、お客さんは当然、その完成形に対して意見や質問を持ちます。「もっとこうした方がいいんじゃないか」「こういう工夫はできないか」—それ自体は悪くないんです。でも問題は、その瞬間から商談が長引き、最初に完成形を見せた時の熱量が失われていくということです。

人間の感動は時間とともに冷めます。お客さんが修正案を出し、新しい図面を作り、またそれを見せて...という繰り返しをしている間に、最初の「これいいな」という感覚はどんどん薄れていきます。結果、プロモーションは破談に向かう。これはよくある話です。

ところが、もし途中経過をすべて見せてあったなら、どうなるか。

お客さんが「もっとこうしたら」と言ってきたとしても、僕は「実はですね、この段階で僕もそれを試してみたんですけど、こういう理由でボツにしたんです」と、履歴を見せることができる。その履歴があるかないかで、全く違う会話になります。

履歴がなければ、どう聞こえるか。言い訳です。自分の提案を押し通そうとしているだけに聞こえてしまいます。でも履歴があれば、「ああ、そうか。それも試されていたんだ」とお客さんは納得する。むしろ「こんなに考えていただいて、ありがとうございます」という感情に変わります。

ゼロリスから学んだこと

実は、僕のコミュニティ「ゼロリス」も、この原理を証明する事例になっています。

ゼロリスは現在137名のコミュニティですが、初期メンバーの離脱率が異常に低いんです。その理由は何か。

実は、ゼロリスは最初、完成した状態ではスタートしませんでした。真っ白なLPを出して「このコミュニティを一緒に作る過程を見たい人、参加してください」という形でプレリリースしたんです。

つまり、最初のメンバーは完成形を見せられたのではなく、試行錯誤の過程をずっと見てきたわけです。だからこそ、その後どれだけ機能が追加されても、デザインが変わっても、離脱しない。「これだけ手間をかけてくれているんだ」という記憶が根底にあるからです。

完成形を見せるだけでは、決して生まれない粘着性です。

AI時代だからこそ、その過程を語ること

話は変わりますが、昔からこういう有名なエピソードがあります。

似顔絵師に「絵を描いてください」と頼むと、似顔絵師が1~2分で絵を描いて「いくらですか」と聞かれて、お客さんがビックリする話です。「たった1~2分で、そんなに高いんですか」と言われるのに対して、似顔絵師が「これは1~2分の積み重ねなんです」と返す—これが美談のように語られています。

でも僕に言わせれば、これは似顔絵師の説明不足なだけです。逆に言えば、お客さんがバカなわけではなく、似顔絵師が職務怠慢なんですよ。自分たちの修行の過程、試行錯誤、経験則をお客さんに説明しないまま、結論だけ見せて価値を求めるというのは、通りません。

ところが今のAI時代、この傾向がどんどん強くなります。みんな効率化を求めて、完成形だけをパパッと出す。試行錯誤の過程は、意識的に残そうとしないと、すぐに消えてなくなります。

だからこそ、です。

これからAIで効率化がどんどん進む時代だからこそ、その効率化の裏側—どんな思考で、どんな試行錯誤をして、どうやってこの形に至ったのか—を語れる人が強くなります。

効率化されたことを忘れずに、それをちゃんと言葉にできる。語られている側の人間。AIがなかった時代に、がむしゃらに試行錯誤していた経験を持つ人。そういう人が、これからの時代は圧倒的な武器を持っているんです。

AI時代にメルマガという手段が強くなる理由については、こちらで詳しく書きました。

なぜAI時代に「メルマガ」が最強なのか?3つの理由をプロが解説

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今週から意識してみてほしいこと

新商品を作ったなら、その作った過程を。既存商品があるなら、それができるまでの過程を。プロモーションで見せる図面、キャッチコピー、提案—すべてに対して「その過程」を意識的に残してください。

ほっとくと、消えます。削除ボタンを押して、完成形だけ残す。それが今の時代の便利さです。でもそれをやると、同時に説得力も消える。

プロモーションの破談、商談の長期化、お客さんの不信感—その多くは、完成形だけを見せることから生まれています。

完成形を見せた瞬間、その時の熱量で決断を迫るのではなく、そこに至るまでの過程を丁寧に示す。その過程を見た上で「それでもこの人についていきたい」と感じてもらう。その時の決断は、時間が経っても揺らがない。

リストマーケティングが最強のプロモーション手段である理由も、実はここにあります。メルマガは、その過程を段階的にお見せできる唯一のメディアだからです。

完成品より途中経過。この発想の転換が、あなたのセールスを大きく変えるはずです。

リストマーケティングをこれから始めたい方は、初心者向けの選択肢をまとめたこちらの記事から読んでみてください。

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